ちょっと本格的なリングが作りたいけど、彫金教室とかに行かないと無理でしょ?
そう思っている方にチャレンジしてもらえるように、シルバーの平打ちリングの作り方を画像付きで丁寧に解説していきます。
このシンプルな平打ちリングは、男女問わず身に着けられるおすすめのデザインなので是非チャレンジしてみてください。
一応私は、現在もジュエリー業界でお仕事をさせて頂いている、現役のプロなので安心してくださいね。
ただ、プロと全く同じ制作手順や道具を使用すると難しいと思いますので、作り方や道具は若干初心者用にアレンジしてあります。
目次
「シルバー平打ちリング」製作に必要な道具
まず最初に、道具と材料を用意する必要があります。
今回はシルバーの平打ちリングの制作なのでシルバーの板はもちろん必要です。
そして、材質にかかわらず指輪作りに必要な基本的な道具があります。
・芯金・・・・指輪を入れて叩く金属製の棒
・ハンマー・・・木槌・金鎚・プラスチックハンマー。叩く道具
・ロー付けセット・・※金属を接合する時に使用する道具
・ガスボンベ
・銀ロー
・フラックス
・ディクセル
・ロー付け台
・ロー切りはさみ
・ピンセット
「揃えるものが多くて難しそう・・・」そう思ったかもしれませんが大丈夫です、安心してください。
この、ロー付けの為に道具を揃えるのが初心者さんには一苦労だと思いますが、
今はセットになっている商品があるのでそれを購入するのがおススメ。
プロも利用しているお店がネットにも出品しているので、そこを利用すれば問題ないです。
バラ売りよりもお得ですし、間違えて買っちゃったなんて事もないですからね。
ロー付けセットの事や、その他指輪作りに必要な道具については下の記事で画像付きで詳しく解説しています。
道具を揃えるところから始める場合は先に↓の記事を参考に揃えてみてください。(使用するロー材の大きさやロー付けについても詳しく解説しています。)
平打ちのシルバーリングの作り方
材料を用意する
まずはリングのもとになるシルバーの板を用意します。
・幅 5mm
・長さ 55mm (作りたいサイズによって長さが変わります。)
・厚み 1.2mm
幅が広すぎると難しくなるので幅は5mm。
今回は11号を作るので、約55mmの長さにしました。
これから始める方は、ピッタリの長さの材料を用意するのは難しいので、長めの材料を頼んで切断して使うのがおすすめ。
下で紹介する材料なら、今回用意した材料と幅と厚みがピッタリなので、必要な長さに切断するだけで使用できます。
(500mmだと11号なら9本、17号なら8本は作れる長さ。)
少し長めに感じるかもしれませんが、失敗した場合でもやり直しができますし、一度完成すると、
サイズ違いやテクスチャーをつけたリングも作りたくなる方が多いので。
送料を払って材料を再注文する方も多いので、そうなるともったいないです。
サイズごとに必要な材料の長さ
7号 (15+材料の厚み〔今回は1.2mm〕)×3.14
8号 (15.33+ 〃)
9号 (15.66+〃)
10号 (16+材料の厚み〔今回は1.2mm〕)×3.14
11号 (16.33+〃)
12号 (16.66+〃)
13号 (17+〃)
ここまで読んでみて「自分のサイズ用にはどのくらいの長さが必要なの?」と思ったはずなので、そこを解説していきます。
まず上の表を参考にしてほしいのですが、7号の場合は15、10号の場合は16と、基準となる数値があります。
その間のサイズは1号ごとに約0.33ずつ大きくなっているのも分かると思います。
必要な材料の長さの計算方法は、
[作りたい号数の基準の数値に材料の厚みを足し、3.14をかける]と覚えてください。
今回は11号を作るので
基準の16.33に厚みの1.2mmを足して17.53。
17.53に3.14をかけると55.04となり、最初に紹介した材料の長さと同じになります。
上に載っていないサイズの基準値は、10号の16を基準にして1号ごとに0.33ずつ減らしたり増やしたりすればOKです。
シルバーの板をなます
ここからは実際に制作の手順の解説です。
最初はシルバーを加熱し「焼き鈍し」を行います。
「やきどんし」ではなく、「やきなまし」と読みます。
この、「なます」作業はとても大切で、固い材料を柔らかくする意味があり、彫金の基本的技法です。
シルバーの板をロー付け台の上に乗せ、バーナーで熱します。

この時に加熱しすぎると溶けてしまうので慎重に行ってください。
赤くなったらピンセットで水にドボンと入れます。

芯金に入れて板を丸めていく
冷やした板の水けを拭き取り丸めていきます。
最初は大まかに曲げるので、芯金にシルバーの中心を当て、手でグイっと曲げてみてください。
芯金の先端ををどこかに立てかけて固定し、
板を両手で持ちグイっと巻き付けるのがポイント。
※画像は撮影の為、片手です。

この状態から下のようにグイっと丸めてください。

焼きなましが上手くいっていればそれほど固くないはずです。
上手く巻き付いたらプラスチックハンマーで形状を整えていきます。
この程度の材料なら金鎚や木槌ではなく、プラスチックハンマーで十分です。
まずは芯金に沿うように軽く叩きます。

片側が芯金に巻き付きました。反対側も叩いて沿わせます。

木槌で叩くと材料が伸びてしまう場合があるので、初めのうちは伸びにくいプラスチックがおススメ。
叩いているうちに材料が伸びてしまうと、完成した時にサイズが大きくなってしまうので慎重に行ってくださいね。
ロー付け部分の調整
この後に「ロー付け」という作業がありますが、ロー付けとは金属の隙間にロー材を溶かし込み接合する作業の事。
リングの場合は板の両サイド(丸めてぶつかる部分)を接合します。
この時に出来るだけピッタリ合うように調整しておくと、この後のロー付けが綺麗にできます。

上の画像のように丸まったら、接合面の凸凹がなくなるようにヤスリなどで整えてください。
画像では百均のヤスリを使用しています。

接合面を綺麗に整えたら、次は隙間をなくしていきます。
隙間を指でグッと縮めてから、最後はハンマーでコンコン叩いて寄せていきます。

画像のように片側づつコンコン叩くと隙間が徐々に狭くなっていきます。
片側だけでなく、両方をバランスよく叩いて隙間をなくすのがコツです。
この時点では真円でなくとも大丈夫なので、隙間を合わせることを優先してください。

この程度まで隙間が無くなったらいよいよ接合していきます。
ロー付け
ここからは一番の難所と言ってもいいロー付けの工程を解説していきます。
ロー付けの準備と実際のロー付け
耐火レンガの上にロー付け台を置き、その上にリングをのせます。
そして、接合したい部分にフラックスを塗ります。

接合面に小さく切ったロー材を置き、バーナーで加熱します。
この程度のリングなら、1.5ミリ×1.5ミリ程度(米粒の半分くらい)に切った小さいロー材で十分です。
準備が出来たらバーナーを使用しリングを加熱していきましょう。
(後でロー付け面が見やすいように、今回はあえて大きいロー材を使用しました。)

加熱している接合面にロー材が置いてあるのですが、火のせいで少し見えにくくなっています。(小さく切ったロー材を切れ目に乗せて加熱してくださいね。)
感覚としては、
まず最初はリング全体を温める
↓
リングと切れ目のロー材の両方の温度が上がる
↓
ロー材が溶ける温度になる
↓
その時にリングの切れ目付近を集中的に加熱
↓
温度の高くなった切れ目にロー材が流れ込む
このようなイメージです。
ロー材は温度が一番高いところに流れようとするので、ロー材が溶けるタイミングで接合面が一番高い温度になるように加熱するのがポイントです。

ロー材が溶けて隙間に流れたら、ピンセットで掴み水に浸けて冷まします。
ディクセルに浸ける

ディクセルは、火を当てて変色した金属を綺麗にするために使います。
指輪が浸かる程度の液が出来ればいいので、ジャムの空き瓶くらいの大きさで液を作ればOK。
※ディクセルをぬるま湯に溶かす際の分量は商品の表示を参考にしてください。また、酸性の液なので、ガラス製の瓶や陶器にしてください。

急冷したリングの水けを拭き取り、ディクセルを溶かした液にしばらく浸けておきます。
ただし、フタの部分は金属なのでずっーと放っておくと腐食するので注意してください。

10分程浸けておけばだいたい綺麗になります。
綺麗になったら、水でよくすすぎ水分を拭き取ります。
形を整えていく
ここからは完成に向けて形を整えていく工程です。
真円になるように叩く
この時点では、ロー付け前に隙間を合わせる為にコンコン叩いたので、リングは歪んでいます。
歪んでいるのでサイズは小さいです。(今は10.5くらい)

そのリングを芯金に入れてプラスチックハンマーで叩いて真円を出します。
最初に用意した材料の長さが丁度良い場合は、真円になると同時に希望のサイズに合うはずです。

画像のように真円が出て希望のサイズになったらOKです。
ロー材を削る

今回は分かりやすいように大きいロー材を使用したので、溶けて残っているロー材が分かると思います。
隙間に流れる丁度良い大きさのロー材で接合すれば、このように溶け残ってしまうことはありません。
ただ、足りないよりは少し多めのロー材で接合した方がいいので、慣れるまでは大きめのロー材で問題ないです。
足りないと接合が甘くなるのですが、多い分には削ればいいので^^

画像のようなヤスリ(ホームセンターや百均にあるもので構わないです)で、はみ出した部分を綺麗にしていきます。
ヤスリで削るとザラザラになるので、大まかに削ったら紙ヤスリでその部分を綺麗にします。
その時にアクリルの棒(これもホームセンターなどに売っています)などに両面テープで紙ヤスリを張り付けると便利です。


ヤスリで付いた傷を紙やすりで綺麗にしていくようなイメージ。
↑の様な感じで感じできれいにしてください。
リングの側面も削る
表面だけでなく側面も綺麗にする必要がありますので、紙ヤスリで綺麗にしていきます。
(表面と側面はどちらから綺麗にしてもいいです。)
画像のように平らなところに紙ヤスリを置いて、リングを前後に動かします。

最初は#320くらいで削ります。
紙ヤスリには目の粗さに種類があるので、粗いものから細かいものへと徐々に変えて削ってください。
#320→#600→#800という感じでいいと思います。
(アクリルに貼り付けて表面を綺麗にするときも、粗いものから細かいものへと徐々に変えてください。)
↓は#600で削っています。

指なじみを削る
ここまでくれば最後の仕上げです。
今の段階では、リングを触っていて痛いと感じていると思いますので、角が立っている部分を滑らかにしていきます。

矢印部分の内側の角と外側の角を、痛くなくなる程度まで削ってください。

その後はこんな感じで内側の傷も綺麗にします。
※ただし、内面を削りすぎるとサイズが大きくなってしまうので、
初めのうちは、内面の角だけを丸くする程度にしておくといいかもしれません。
角が丸くなっていれば装着した時に痛くないので、それでOKです。
あると便利な道具
一応ここまでは紙ヤスリなどを使い手作業で仕上げてきましたが、あると便利なリューターと呼ばれる電動道具も解説しておきます。
リューター(マイクログラインダー)は先端工具を付け替えて色々な作業ができるのですが、紙やすりを丸めたロールサンダーという先端工具を使用すると、

内側についた傷やロー材を削ったり、

表面も簡単に削れます。
リューターがあるととても便利なので、手作業で仕上げてみて大変だなと感じた方や、ハンドメイドを長く楽しみたいという方にはおすすめ。
先端工具をドリルにすれば、パーツなどの穴あけも簡単にできる万能工具です。
安価過ぎるとパワー不足に感じますし、私が仕事で使用している10万円以上するようなものは高価すぎてプロ用になってしまうので、もし最初に購入するなら↓の性能程度のものがいいと思いますよ。
まとめ

ここまで解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
上の画像の立てかけてある平打ちリングが今回制作したヘアラインです。
棒に通してあるのは鎚目(つちめ)と呼ばれる凸凹のテクスチャーを施したもので、平打ちを制作できれば鎚目のリングも制作できます。
鎚目の付け方は別の記事で解説していますので、カテゴリーの「ハンドメイドアクセサリーの作り方」から好みの記事を参考にしてみてください。
シンプルな平打ちリングは男性も女性も身に着けられるので、カップルでハンドメイドを楽しんでみるのもおすすめです。